業種:屋外機械メンテナンス業
期間:1年(プロジェクト型支援)
従業員:50人
テーマ:組織づくり
状況
・もともと大手メーカーの100%子会社だったが、数年前中規模同業者に売却され、最も多かった親会社からの受注が大幅に減少し、売り上げが減少傾向
・親会社から受注が当たり前に来ていた時からの従業員と中途入社組、特に廃業した独立系の同業者の元工場長やその元部下たちのグループの間に意識の差があり対立構造が生まれている
・そんな今こそ新たな収益の柱をつくる話し合いや協業体制が必要だが、社内がギスギスしていてコミュニケーションが取れておらず、話し合いをしても対立ばかりで前に進んでいかない
取り組んだ課題
・困難な状況で協業できる関係作り
・収益改善に向けて全社で動き出せる組織作り
・活動のリーダーの育成
プロジェクトの方法
・対話型組織開発の手法の一つ、AI(Apreciative Inquiry)の4Dサイクルを取り組みのベースとして全体をデザイン
・各部門のリーダーと次期リーダーを交えた「コアチーム」を編成し、チーム活動として実施
・月次の定例ミーティングのグループプロセスコンサルテーション、4回のワークショップ(体験学習)のファシリテーションを支援
実施内容
・契約~準備「DIFINE/ENTRY」
組織サーベイや経営診断で客観的データから現状を把握するとともに、プロジェクトメンバー一人一人へのインタビュー、会議の見学を実施し、様々な角度から組織やメンバーについて知る期間を持ちました。
分かったこと
・経営層と従業員の間に断絶がある(不信頼と強い反発)
・プロジェクトへの反対意見が強い(影響力の強いリーダーの「参加しない発言」の影響)
・現状を変えたいという共通の想いがあること
その上で、プロジェクトの目的を
→プロジェクトの目的を
『「変化の時代」を乗り越える変革チームになる!』
に設定しました。
・第1回プログラム「DISCOVERY」
(キックオフ合宿)
インタビューでそれぞれの職業人生を作ってきた経験を分かち合い、その語りの体験からLEGO® SERIOUS PLAY®メソッドを活用し、ポジティブコア(強みや大切にしている価値観などその人に力を与えているもの)を表現し、共有。
LEGOブロックで可視化されたそれぞれのポジティブコアとそれを並べてチームの可能性のストーリーが語られました
・第2回プログラム「DREAM」
フューチャーサーチという未来探索型の組織開発手法を取り入れ、それぞれが観ている社内外の「現在」とそこへの関心を話し合いました。
LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドで自分が望む会社の未来の姿を表現し、そこから持ち込みたいパーツを選び出し、それが実現している会社の姿=「笑顔あふれる会社」を共同で創り出しまし、それがそのままプロジェクト名となり、メンバー全員で目指す未来が合意されました。
・第3回プログラム「DESIGN-1」
全員が目指したい未来ができた一方、まだ関係性の安定性までには至っておらず、1名欠席の状態からスタート。
その「欠けている」ということについて話し合いがなされました。
その上でDREAMを目指すために何をするのか、「未来の柱になるもの」について話し合いました。
「ここから先は●●さんがいなければ進めない」と今回欠席したメンバーを必要とする声と、どう巻き込むのかという話し合いがなされDESIGNプログラムは別日に改めることとなりました。
・第4回プログラム「DESIGN-2」
事前の定例会議で前回欠席のメンバーも交え、「未来の柱になるもの」の確認とそのメンバーのアイデアを加え、「メンバー全員のもの」にしていきました。
その柱同士の関係や、何から取り組むのかについての話し合いと実現するための体制づくり(サブプロジェクト化と運営ルール)をメンバーのファシリテーションで進めました。
この回からファシリテーター・進行の役割をメンバーに委ね、私はサポートに回ることで自主運営のプロジェクト活動のスタートとなりました。
・「DESTINY」
これまでのプロジェクト活用を踏まえての次年度の事業計画をサブプロジェクトメンバーが作成し、メンバー全社員の前で発表する機会を持ちました。
プロジェクトメンバー以外の社員や現状への不満や厳しい指摘の言葉がでましたが、メンバーによる応答と「自分が責任をもって成し遂げる」という強い意思表明で新しい1年が始まりました。
途中、起こったこと
・プロジェクトに反発するメンバーのボイコット
→後の中心メンバーに
・自信を喪失し、プロジェクトを抜けたいというメンバー
→メンバーの声掛け、サポートで仲間として活動する決意
・業績低下に伴う親会社会長からの介入(プロジェクトメンバーへの退職勧告)
→経営者と協働し解決
結果
・経営と従業員の関係の変化(与えらえる関係からともに創る関係に)
・それぞれの「違い」を対立ではなく、活かしあうという発想への転換
・過程の中で相互サポート体制や作業場の改善について積極的に話し合われ、受け入れ体制を作った上で新たな取引先の開拓ができ、従業員であるメンバー主体が主体となって新たな組織の一歩を踏み出すことができた
POINT
・経営者もメンバーの一人として参加し、一人一人を丁寧に語り、相互理解をする対話を重ねることで対等な関係をつくってきたこと
・途中おこった外部環境の変化や内部の対人トラブルにチームで向き合ってきたこと
・会社の未来や活動を自分たちで創る対話を重ねていく体験から「自分たちの活動」の推進者が社内に育まれたこと