こんにちは。
今回も先日に続き、学んだことを書いてみたいと思います。
(一応今回で最終回にしたいと思います・・・)
前回まではざっくりいうと
「事業の安定期に生まれる淘汰環境や適応的課題への対応に対話型のリーダーシップ、対話型のマインドセットが大切」
だという話を書きました。
・イノベーションは組織的・意図的には起こらない
先日参加した学びの場では、埼玉大学大学院の宇田川先生に続き、一橋大学 楠木 健教授の「イノベーションの本質とは」というお話を聴きました。
楠木教授は「イノベーションは何ではないか」という逆説的な視点からいつも通りテンポよく痛快な語り口で楽しく聞かせていただきました。
楠木先生のお話では「イノベーションではないもの」として「進歩」を挙げ、「イノベーションと進歩は明確に違う」、「イノベーション!と声高に叫ぶ人ほど、イノベーションと真逆の方向性に走りがち」、と話されました。
イノベーションは非連続なもの(ex.馬車を何台重ねても蒸気機関車にはならない)、ドラッカーさんのことばを借りて「イノベーションとはパフォーマンスの次元が変わること」(技術ではなく社会を変えるレベル)であり、連続性のある機能強化はどんなにすごいことでも進歩だと言われました。
また、進歩の追求には終わりが訪れるとも・・・(人のニーズの限界点)
イノベーションの例として挙げられた、ソニーのウォークマンはそれまで「家の中で聞くもの」だった音楽に「持ち歩く」という新しい価値を与えたことがイノベーションだったと言います。
それまでの音質を上げるとか、長時間録音するとかという「進歩」の次元でなく、音質はむしろ下がっても社会に新しい価値が生まれた点でイノベーションだったということです。
イノベーション企業の代名詞と言われたAppleの製品ではiPodこそイノベーションで、最初のiPhone、iPadもまぁまぁイノベーションであったがiPhone XやiPad proもApple Watchも「ちょっとした進歩」「おしゃれな進歩」に過ぎず、戦略的に「進歩路線」を取っているとのこと。
こういう商品のレベルだけでなく、会社の画期的な仕組みや組織づくりなどにもイノベーションは当てはまると思います。
環境変化の激しい時代では企業の商品レベル・組織・しくみにおいてそうしたイノベーション・進化が求められているのは確かですが、それは進歩ではないため、従来の発想を超えないとできないということです。
ということで、楠木教授は「イノベーションを連発する」ということは定義からしてあり得ない、イノベーションに向けて努力するほどコモディティ化(陳腐化)のサイクルに飲み込まれるという罠があるといわれました。
これはイノベーションも見える化して数字情報など可視性が高まると進歩へのすり替えが起こりやすく「進歩競争」の結果、コモディティ化が起こるということです。
とはいえ、イノベーションは最初に起こしたところが最も利益を得るので、どんな企業でものどから手が出るほど欲しいのが本音だと思います。
で、「どうやったらイノベーションを起こせるのか?」という問いに対して、楠木教授は「愚問の極み」と切り捨てました(痛快!)。
逆に何をやってはいけないかという視点で「イノベーションを頑張るな」と言われました。
企業でいえば組織に「イノベーション推進本部」や「イノベーションプロジェクト」を作って「今月中にイノベーション案件を5個出す」「みんなでがんばってイノベーションを起こそう!」といってもできるわけが無いとのことです(進歩はできます)。
楠木教授は講演の最後にはイノベーションの起点は「組織より個人」と言われました。イノベーティブなアイデアを思いつくのは特定少数の「個人」であり、多くは組織的なコンセンサス(合意)は取れないということです。
ここで自分の中で前回までのブログに書いた宇田川先生の「対話型リーダーシップ、対話型マインドセットなくしてイノベーションは起こり得ない」というお話とつながりました!
アイデアが企業の合理性のもと合意がとれないものであっても、賛成意見、反対意見含めてフラットに認めて「対話しようぜ」というマインドを持つということ
「イノベーションの起点は組織より個人」であっても組織的な取り組みが不要かと言われるとそうではありません。はじまりの個人の想いやアイデアが大切にされ、対話による探求で力を合わせて未来につなげていく、それが組織に求められることだと私は思っています。
先日、「対話って力を貸しあうことであり、活かしあう道を探求すること」とあるところでお話ししました。
でも人と人の間には利害関係もあり、感情もあり、それを超えて関わる本当の対話って実はとてもむずかしい。
昨今の組織開発ブームで大切さがわかっていても「なにから」「どうやって」いいのかわからず立ち止まってしまったり、事例や「正しい(と言われる)やり方」に頼りたくなることもあると思います。
でも、組織は固有性が高く、組織づくりに「正しいやり方」は存在しないと思っています。
だからこそそれに組織にいる全員で向き合って探求していくことしかありません。
そのむずかしさ、答えのないものにともに向き合い、一人一人が大切にされる「対話型の組織」への道をともに進むことが自分のお手伝いしていること、お手伝いしたいことだなと改めて感じた機会となりました。
想い余って長くなってしまいましたが、また気まぐれに「そこに向かう道」について思ったことなどを書いていきたいと思います。
今日もお読みいただきありがとうございました!
( ´ ▽ ` )ノ