組織の「物語」が書き換わるとき

こんにちは。

またまた久しぶりの更新になってしまいました・・・涙

4月に入り、3月まで取り組んできたある企業の組織開発のご支援がひと段落つきました。

今、一年起こったことをふりかえり、これからについて考える時間を持つことができ、少しずつ自分のなかで言葉が生まれてきています。

この一年の取り組みの中でいろんなことが起こり、自分自身の変化もかなりあったと感じるので時間をかけて伝えられるようにしたいなという気持ちでいます。

これからまた新たな学びの期間を迎えるにあたり、自身の活動の紹介と自身の覚えのためにブログで活動を振り返ります。

組織開発支援の振り返り

クライアント企業様との関りは社長様からの「事業環境が厳しくなる中、部門同士、従業員同士が力を合わせないといけないが、うまくいかない」という相談からはじまりました。

その企業様はある大手製造業のグループ会社(完全子会社)として25年間やってきたものの、消費者の行動の変化や技術が変わってきたことから業界自体の雲行きが怪しいこと、販売形態の変化などの背景から別の地域にある商社に3年前に売却されました。

これまで何もしなくても親会社からの安定受注でやっていけたのに、突然自分たちで稼がなければならなくなくなったのです。

世の中小企業ではあたりまえのことが、その企業にとっては当たり前でなかったので働く人たちには大きな影響がありました。

それまでは大企業の加護のもと「給料や賞与は出てあたりまえ」「会社がつぶれるわけがない」という安定志向の従業員が多くいました。

それから3年の間に入ってきた中途採用者は「この会社はヤバイ」と危機感を感じていて従業員同士の意識の乖離が顕在化してきて、お互いを批判するようなこともありました。

社長も「この状態を何とかしなければ」と思い、組織開発やワークショップについての本を読んだり情報を集めていろいろやってみたものの、溝は深まるばかりでどうコミュニケーションを強めていくのかわからず困ってしまっているという状況でした。

そこである場で名刺交換をした際にわたしの名刺の「企業によりそうファシリテーター」のことばを見つけていただき、声をかけていただきました(「ファシリテーターなんて人が本当にいるんだ?」という反応でしたが笑)。

このような相談を受け、私からも組織開発の考え方や1年間の支援について提案し、ほとんど全ての従業員の反対もありましたが、「今やるべき」と決断され、ともに取り組むことになったのでした。

取り組みは、3カ月の診断・準備期間を含む、AI(Appreciative Inquiry)をベースに組み立てた1年のプロジェクトとしてスタートしました。

診断のフェーズを入れているのでこの取り組みはいわゆる「診断型組織開発」と「対話型組織開発」のミックスであったと言えますが、診断は私や運営側が現状認識をするために留め、マインドセットは「対話型組織開発」の価値観で取り組んだと思っています。

と、このあたりまで語りだすとスーパー長くなるのでまた別の機会で・・・

対話型組織開発とナラティブ・アプローチ

ナラティヴ・セラピーで著名な国重 浩一先生(こうさん)は問題の原因を究明し、ロジカルに解決していくアプローチを「科学的説明」と説明されました。

「科学的説明」はいわゆる技術的課題には有効なアプローチである一方で、人や組織で起こっていることに適用すると、ときに希望が無くなってしまうリスクがあると話されました。

つまり、問題に対して分析で示されるパターンやエビデンス(根拠)を突き付け、解決をしていこうというアプローチには、「こうであるからこうである」という明快さがある一方で、エビデンスで示されたある状況に人が立っているとき、周りの人やときに自分自身から改善を迫られたり、根拠に可能性を閉ざされてしまったり苦しい思いをすることもあるということです。

また、科学的なアプローチではロジックで説明できる範囲の外側には行きにくい側面もあるのではと思っています。

当事者同士の対話により、どう未来を創っていけるかを探求することで組織の成長を促す対話型組織開発は「ああなればこうなる」という科学的な方法ではありません。

それに関わるファシリテーターも答えはもっておらず、実践の中での実感として、専門家でありながらときにやり方すらも持たないものなのかもと感じています。

私も、今回の取り組みでは、ただ、ひたすらに当事者に向き合いその声を聴き、やり方と答えをともに探していくようなアプローチをしました。

具体的には通常1泊2日~3泊4日で行うと説明されることが多いAIを一年かけて日常を交えながら行うという方法を取りました。

日常的に私も定例の会議に参加する等現場に触れるようにし、AIの4Dサイクル(Discovery-Dream-Design-Destiny)の各段階でのワークショップは「その時の皆さんが対話するためのもの」ということに特化して都度、場とプログラムをデザインしていきました。

数日間かけて集中的に行うAIのワークショップでは「ポジティブな問い」が持つエネルギーを高めながら一気に回すことが多いのですが、ネガティブなことも起こりうる日常を交えながら、それに寄り添い実践する中ではものすごくたくさんのことが起こりました。

ワークショップで感じられた理想や高揚からネガティブな現実による落胆が、退行に感じられた時の非難が私に向けられたりと、ファシリテーターとしてのありようが試される場面が都度都度あり、プロジェクトメンバーの皆さんと浮き沈みしながら過ごした一年でした。

が、このあたりまで語りだすとまたスーパー長くなるのでまた別の機会で・・・

一年前の開始時は「アイツがいる限りダメだ。辞めさせたい」とか「こんな会社に希望は持てない」「このプロジェクトをやるなら辞めます」という言葉が語られていました。

それから1年・・・

対話で組織の「物語」が書き換わる

最後のD=Destinyにあたる経営方針発表会ではプロジェクトに反対していた当人たちが自分たちの言葉で「この会社を笑顔あふれる会社にするために〇〇をしたい。みんなの力を貸してください」と全従業員を巻き込むようなメッセージとして最初とはまったくちがう言葉でこの会社のこれからについて語られていました。

対話型組織開発の根本にある原則は社会構成主義というものです。

社会構成主義では現実は人の語る言葉でつくられるという立場を取り、組織や社会もそこにいる人たちがそれをどう語るかで構成されると考えています。

私がナラティブというキーワードに関心を持ったのも、「自分や自分たちを語る物語」へのアプローチであるという点です。

今回の案件でも一年前と当事者の「語り」が変わり、組織の新しい「物語」が綴られ始めたのを感じました。

対話型組織開発でどう組織が変わっていくのか、書物などで紹介はされていますが、実感としても感じるプロセスは以下のようなものです。

簡単に言っちゃうと「お互いちゃんと話をして、新しい自分たちを再定義していこうよ」というプロセスですが、そこには企業がそれまでの歴史で作ってきた文化や風土であったり、日常の人間関係の感情などが横たわるため簡単にはいきません。

どのような内容で、どのような場を持って発見や学び、グループダイナミクスが起こる対話にするのかがポイントになってきます。

それをガイドするのがAIの4Dサイクルのようなモデルや手法であり、それをその組織にフィットさせ、対話や向き合うことを支援していくのが組織開発を支援するファシリテーターの仕事だと思っています。

と、概要だけで結構な長さになってしまいましたが、あらためて自分が得てきたものややってきたことをお伝えできる機会を持てたらと思っています。

企業の統廃合やM&A、世代交代、イノベーションへのニーズ、働く人の多様化などなど、いままでになく「違い」に直面する機会が増えている今、「違い」を力にするための対話が求められているように思います。

そんな時代のファシリテーターとして成長するため、ゴールデンウィークもまた学び漬けになりますが、新たに関わる予定のクライアント企業様の新たな物語に想いを馳せながら探求していきたいです!

今日もお読みいただきありがとうございました!
( ´ ▽ ` )ノ

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